【三婆】

去年から楽しみにしていた演目なのに
チケット購入で出遅れて5列目の1地番端の席
桟敷の下
行儀は悪いけれど仕切りをまたいで着席することもできるし花道も近く意外にいい席だった
様々なプレイガイドサービスで空席を確認して
今回初めてチケットweb松竹を利用してみたのだけれど
入り口に設置されていた機械の処理の早さにびっくり
手数料もかからないから次回機会があったらまた利用しようと思う
もう十数年前になるかもしれない
誰が出て、どこの劇場だったかも忘れてしまったけれど
なんか面白い芝居だったという記憶が残っており
しかもキャストが大竹しのぶ!渡辺えり!!キムラ緑子!!!
楽しみしかない時は1961年前後
金融会社の社長武市が急死した神楽坂の妾宅
妾:駒代(キムラ)、専務:瀬戸(段田)、社長の妹:タキ(渡辺)、本妻:松子(大竹)が集まってくる場面から始まる
右往左往する葬儀会社と金融会社の社員
吉本新喜劇的でもある
社長の借金返済のため妹が住んでいた渋谷の家と本宅の一部が売られ
神楽坂の妾宅は賃貸の契約が切れ
本宅にそれぞれ押しかけてはじまる奇妙な共同生活
武市家の女中の花子は養子になれるのではないか期待し
出入りの八百屋の御用聞き辰夫と恋愛中
いったん娘のいる鳥取に身を寄せた専務は娘に邪険にされ
老け込んで再び武市家を訪れともに生活をするようになる
駒代とタケを家から追い出したい松子は様々画策をして
タキが八王子の老人ホームへ移る前夜に開いた晩餐で
二人とも出て行かないでと引き止めて共同生活を続けることになる
20年後、辰夫と結婚して厚木に越した花子が
辰夫と三番目の子供を連れて荒れ果てた武市家を訪れる
あまりの荒廃ぶりに亡くなったのかと思っていたら
よいよいの瀬戸が現れ、門をくぐると
三婆と一爺の生活はまだ続いていた
思い思いに過ごす4人を前に
「帰れなくなっちゃった」とつぶやく花子に
「またくればいいよ」と辰夫が返す
その後ろでは高齢者政策を訴える選挙カーからのアナウンス
とても遊び心のある演出で
渡辺えりさん演じる妹タキのキャラ設定が飛び道具
電気くらげとあだ名をつけられている態を上手に実体化している
冒頭の乱れた着物姿の妾と対峙する松子は上等の着物をきりっと着こなし
30年旦那孝行してきたのにすべて持っていかれてしまう苛立ちを爆発させる駒代
そして灰色の男たち
筋書きの中でご本人たちも言及していたけれど
「婆」を演じるには相当若いキャストなのだけれども
役者の年齢はほぼ本通り
「おばあさん」と呼びかけられるせりふも多く
少し不思議な感じ
かかれた当時とだいぶおばあさん感が変わってきたのだなぁとも思うけれど
この4役者は同年代の中でも若い方なのでは
また、そこで配役したのが面白いともいえる
ただ、さすがに80代の3人は若すぎた
特に大竹さん肌がつるつる
そのギャップはジャニーズJr.の安井さんにも言えて
どう頑張っても八百屋(都心に新規出店を図った経緯からスーパー化した敏腕経営者かもしれないけれど)の40代の親父には見えない
頑張っても20代後半
一方福田さんは20代も40代も違和感なく演じてらっしゃって
物まねの観察力かも
セットの装置がとても凝っていて
家がぐるぐると回りながら中庭、松子の部屋、タキの部屋、駒代の部屋が現れ
セットを見ているだけでも楽しかった
客層はさすが新橋演舞場
主要な役者が登場すると拍手
花道からはけても拍手
劇中で役者が歌うと手拍子
思ったことが口から漏れるようで
大竹さんが通ると「きれいねぇ」と感想を言い合い
次の展開の予想をつぶやいてみたりしている
こういうのもついてのこういう芝居
カーテンコールもなくさら〜と終わってしまった
その一方このての観劇スタイルになれていない方も見受けられ
35分の休憩にたいそう驚かれていた
(でも客席でちゃんと幕間に飲食していた)
隣で観劇されていたご夫婦は一幕の最後で
松子が花嫁衣裳を羽織って泣き崩れるシーンについて
あれやこれやとお互いの意見を交わしていたが
夫婦で見て意見が言い合える関係は素敵だなと思いながら
奥様は何やら思いを抱いているようで大変だったんだろうなぁと変な詮索をしてしまった
また、老人問題に脚光を当てた作品とされているけれど
瀬戸専務の父と娘の関係が痛い
今ならばもう少しここに焦点が当たるかもしれない
それと、大竹さんのしゃべる声と歌う声のギャップが面白い
本当に澄んだ素敵な歌声なのだ
個人的にはキムラさんの声が好き
膝を折った挨拶もあだっぽい
幕間に緞帳の説明があった
まったく聞き流してしまったが
歌舞伎座の緞帳と対なのだとか