十二人の手紙 (中公文庫)

十二人の手紙 (中公文庫)

店員さんの手書きのポップに惹かれて購入
井上ひさしさん44歳ごろの作品で
エロとグロと悪意にうっすら満ちた手紙形式のミステリー短編集
店員さんの一押しは「赤い手」
読了後ネットで書評・感想を検索すると
圧倒的に「赤い手」を押す意見が多い
エピローグで明かされる「実は、、、」の部分も大きいのかも
収録されている13篇はどちらかといえばなんともやるせない話が多く
私が特に読んでいて辛かったのは「桃」と「泥と雪」
どちらともいけない終焉(死にはしないのですが)に進んでいく予兆に溢れていて
苦しくてページをすっ飛ばしたい気持ちと闘いながら読んだ2篇
フィクションだとわかっていながらも辛い
そして反芻してしまう
プロローグの「悪魔」の手紙の主が柏木幸子
2篇目の「葬送歌」の手紙の主が小林文子
3篇目の「赤い手」を挟んで4篇目の「ペンフレンド」の手紙の主が手紙を出す友人が小林幸子
これは読者を惑わせているとしか思えない
ここでちょっと名前に引っかて読み返したのだけれども
どうも関係がなさそうなのでそのあとは読み流してしまっていた
エピローグのしてやられた感が半端ない
筋とは別にプロローグの「悪魔」の冒頭
花巻から水戸を経由して上野に着いたくだりでそれはどんな路線なのかと気になって
茨城出身の同居人に説明する際に文章をそのまま読み上げたのだが
これがとても読みやすい
一読しているからなのかもしれないがつっかからない
というか読んでいて気持ちがいい
これが井上戯曲(じゃないけど)の気持ちよさなのかと
一端に触れた感じがした
で問題の路線だが昔の夜行は東北本線から常磐線を経由してたのではないかということだった
このあたりで「日本人のへそ」の冒頭を思い出した
なんとなく全篇北・東日本の匂いがする
巻末の解説を書いているのが扇田昭彦氏なのもちょっと嬉しい