シアターウエスト【二人だけの芝居 ―クレアとフェリース―】2016年劇団民藝4月公演


  • テネシー・ウィリアムズ
    • 原題:THE TWO-CHARACTER PLAY
  • 訳・演出
    丹野郁弓
  • 出演
    奈良岡朋子 岡本健一(客演)
  • スタッフ
    ・装置:島次郎 ・照明:沢田祐二 ・衣裳:片野光(share spirit)
    ・効果:岩田直行 ・舞台監督:中島裕一郎

久しぶりの劇団民藝
大滝秀治さんがお亡くなりになられてから見ていないかも
(労演もなくなっちゃったし)
2月にたまたま観劇した「オーファンズ」で公演ポスターをみて
チケット購入
平日のソワレ観劇のエクスキューズとして母を誘い池袋へ
ちょっと安くなっていたチケットを購入できたのもうれしい
18:30開演なのが民藝っぽい
東京芸術劇場の地下の小さな劇場
「箱」という言葉が良く似合うプロセニアム・アーチのある舞台
劇場の案内によると195〜270席とだいぶ幅があるので
座席が稼動できるようにだと思うのだけれど
少し簡素な感じ
2月に「オーファンズ」を観たときは気にならなかったのだけど
今回は上演中に客席が少しうるさい
木の床を堅い靴で歩くような音が
断続的に発生
遅れて着席している様子はないので
客席のしつらえから発せられているのではないかと思う
客層も高く小さな椅子にじっと座っているのが辛いのかも
舞台と客席を仕切る幕はなく
舞台装置がすでに露になっている
上手にはなにやら大きな像が配置されていて
奥のカーテンからフェリース役の岡本健一さんが登場して意味深なせりふをつぶやいて芝居が始まる
そこからの展開がすべて混乱
クレア役の奈良岡さんが登場してさらに混乱
どうやらこの二人は地方公演をしている役者の姉弟
劇団のスタッフがほとんど逃げてしまい
それでも劇場で芝居の場当たりをしているのではなかろうかという設定の全貌が分かるのが
だいぶ芝居が進んでから
客席が芝居でも客席側にあたり
芝居を見ているこちら側も芝居に引きずり込まわれたような錯覚にとらわれる
気が狂ったと思われた俳優姉弟が演じるのは
父が母を殺して自殺したのではなく
母が父を殺して自殺したと(逆だったかもしれない)主張して
保険金が下りないかと思案したり恐ろしい外へ出ようと試みる
両親が死んだ家でひっそりと住む兄と妹
弟の書いたプロットを勝手に切って演じる姉
芝居の中の兄妹も不安定だし
演じる姉弟も不安定
入れ子のような劇中劇のような
あちらとこちらがぷつぷつ途切れて
とにかく不思議な芝居
終盤で演じていた姉が
「こんなギシギシうるさい客席だと集中できない」みたいな台詞があり
もともとの台詞なのだろうけれど正しく「そう!」と驚く
他にも台詞がかぶったり、途切れたり、詰まったり
それが演出なのかどうなのか
とにかく二人の言うこと動くことが奇妙にリアルだった
隣で見ていた母は1幕では撃沈
寝てしまっていた
他の客席からも寝息が聞こえたりと
なかなか芝居に入り込むのが難しい作品だったのではなかろうか
終演後たまたま同じ芝居を見に来ていた友人と再会した母が
そのお友達とおしゃべりしていたことを聞くと
「低い声が聞き取れない」と
民藝の芝居を好んで観に来ているらしい友人も
「難しかった」との感想
70代の母が難しいと語った芝居に挑んだ奈良岡さんにただただ敬服
演る方も相当気力の必要とする戯曲だと思う
スカートからのぞく奈良岡さんの足は
失礼だけれどもおばあちゃんの足のフォルム
けれど綺麗なプリントのシフォンのようなワンピース
銀色のコートをとても素敵に着こなされていて
声も姿勢も力強い
また強弱もかわいらしい声色も使いこなし
なんてどっしりしながら軽やかなのだろう
パンフレットが600円で読むところがいっぱいあって
こういうパンフが大好き
1000円でおつりが来るパンフは最近買っていない
パンフに収載された奈良岡さんと岡本さんのインタヴューが面白かった
岡本さんの奈良岡さんloveが溢れていた
民藝の稽古場にこの芝居が決まる前から入り浸っていたというのにちょっと衝撃
違うコラムでは段田安則さんが京都労演でバイトしていたことなのがわかったり
なかなか楽しい一冊だった
そしてロビーに飾られた花の札の豪華なこと
小さい劇場には収まらないほど
なにより力が入っていたのが入り口付近のジャニーズ事務所関係の花
岡本さんはまだジャニーズ事務所所属だったのか、、、