太宰治の辞書

太宰治の辞書

ふらっと入った書店で平積みになっていて
表紙と作家名と帯で
思わず購入
「円紫さんと私シリーズ」の新刊
ずっと読んでいなかったので間が抜けているかと思ったら
なんと17年ぶりの新刊
しばらくつんどくしておいたけど
数日前読み始めて
午後なんとなく時間ができたのでようやく読了
たぶん最初の1冊目は高野文子さんの表紙に惹かれて購入した『空飛ぶ馬』
何に驚いたかといえば
「私」が生活する場が私の生活する景色とかぶったこと
後から明かされた作者が春日部高校出身で
春日部高校の国語教師ということで
合点がいった
春日部周辺の景色が本の中に描かれていたわけなのだ(たぶん)
そしてちょっと同年代っぽいところも
読んでいて楽しかった
断然「私」のほうが優秀だったのだけれども
そんな新作はちゃんと「私」が成長して
出版者のベテラン編集者になっていた
しかも中学生の子供までいた
読む私が小説の時間の流れについていけていない
中盤でようやく追いついた感じ
東京の西のほうに家を買った「私」が
遠くに行ってしまったように感じ
(そもそも「私」が春日部に住んでいた設定ではないけれど)
今回の謎はもっぱら小説の中
本当に本、作家が好きなんだなぁと感心する
そしてここに出てきた作品は一冊も私は読んでいないし
最初の謎の『ピエール・ロティ』は名前すら知らなかった
けれど楽しめたのは
謎を解けば新たな謎が現れて
それを楽しそうに探っていく「私」(作者)のワクワク感
フットワークが軽い軽い
文学館や出版社にどんどん訪れる
特に今回「あらすごい」と思ったのは
太宰治の「女生徒」のモデルとなった有明淑の元の記事にあった「黴」の件
「私」に尋ねられた文学館の職員がその謎を解く
太宰の「女生徒」では題名の異なる映画だったけれど
有明淑さんは映画ではなく母と築地小劇場へと足を運んでいた
なんと文化的な家庭なのだろう
それに比べて私ときたら
先日「万座・鹿沢口駅」から草津に乗って上野へ向かう道中
友人が「新前橋駅」で降りたときも
ひとつも萩原朔太郎のハの字も出てこなかった
そもそも萩原朔太郎が前橋出身だったことすら知らなかった
ロティを知らなかったのだけれども
読後なんとなく引っかかる
もしかしたら高校の国語の時間「舞踏会」を読んでいたのではないかしら
「ワットオの絵の中のお姫様のようだ」の台詞が気になる
国語の授業で「ワットオの絵」を調べた記憶があるのだけれど
なんかあやふや
まったく張り合いの無い女生徒だったということに笑ってしまう

で、一番衝撃的だったのは
芥川龍之介の『舞踏会』の最後に出てくる老婦人が
49歳だということ
日本人の寿命はだいぶ延びたんだなぁと