【東憲司版 戯作者銘々伝】こまつ座 第109回公演紀伊國屋書店提携

井上ひさし作「京伝店の烟草入れ」「戯作者銘々伝」を下敷きに
劇団桟敷童子の東憲司が書き下ろした
こまつ座待望の新作
三途の川に集った蔦重(蔦屋重三郎)と
蔦重に見初められた滑稽本黄表紙本の戯作者たち
それぞれの短い話が絡み合って繰り広げられていくプロット
後半は三尺玉を打ち上げようとする花火師を追って展開
幽霊たちの思い出話、後日談なので
前半後半とで時間が飛ぶ
残念なのはわたしがとにかく戯作者、黄表紙の知識がないこと
ところどころで発生する小さな笑いは
何かしらを知っているから面白いのだろうなとうらやましい
ふふっと思ったのは塙保己一の名前が出てきたトコ
フィクションをフィクションとして楽しめ切れていない
圧倒的な情報量なので
ノンフィクションとして受け取ってしまいそうになる
そしてもっと残念だったのは
扇田昭彦さんがお亡くなりになられ
ずーっと「The座」に連載されていた『演出家の時代』が次号で終了となってしまったということ
「The座」はこれだけを読む為にも買っても良いと思うほど(いつの間にか値上げしていた)のコラム
本当に残念
そして、どうせチケットを買うなら
アフタートークのある日にしよう
(アフタートークがあるのすら忘れていた)
ぐらいの気持ちだったアフタートークが面白かった
こまつ座の井上さんとスタジオジブリ鈴木敏夫さん
井上さんに紹介されて登場すると作務衣と雪駄
ちょっと席から笑いが漏れる
鈴木さんは25年来こまつ座の芝居を見続けて
今回は蔦谷さんを中心にしたら良かった
みたいなことを漏らして
なるほどプロデューサー目線なんだなと思いながら
本題は「戦争を二度と起こさないということ」
こまつ座らしいけれどずいぶん大仰なテーマだなと思っていたら
鈴木さんが提案したとのこと
鈴木さんは昭和23年生まれで
物心ついたころには「戦争は二度と起こさない」ものだと思っていたと
それが時間がたつと少年漫画誌では
「あの時、ああしていれば日本は勝った」的な戦争ものの連載が始まった記憶
小学校4年生のときに同級生の高橋君に
「日本は徴兵制になるらしいぞ」といわれ大変衝撃だったこと
小学生の後半になるとハイカラな音楽が歌謡曲と一緒に流行りだし
どうやらそれはアメリカで流行している楽曲を訳して歌っているらしいことを知り
中学高校ではほとんど外国の曲ばかり聞いていたこと
しばらくするとテレビではアメリカのホームドラマの放映が始まり
それを見ている自分たちが非常に貧しいこと
安保闘争で反アメリカだったこと
大学生になると東宝の8.15映画*1のシリーズが始まって
実はずっと見ていたこと
とにかく分裂しているということを飄々と
その間に無免許で交通事故を起こしたことや宮崎駿さん*2のことなどを交えて
揺れ動いてきた自分を素直に語る姿が印象的

*1:主人公は戦争には反対していたが参戦すると活躍するみたいな筋だったと

*2:短編アニメの製作を始めたらしい