【かもめ】

fk_akk2008-07-12

前日に格安でチケットを手に入れる
沢山チラシは貰っていたけれど行けるとは思っていなかった
赤坂ACTシアターは以前『天保十二年のシェイクスピア』を観に行って
大きいけれど急ごしらえの粗末な小屋
の印象だったけれど
今回行ってみて随分様子が違う
1階客席890席、2階客席434席
1階最後列での鑑賞でもストレスは感じず楽しめる客席と舞台
しかし、ホワイエ空間が狭っ苦しい!
休憩ではcafeに長蛇の列の上
それをいただく空間が少なく
終演後は出口に至るまでが大変な大混雑
これを如何に解消するかがこの劇場のこれからの課題だと思う
本当に全然くつろげないし
余韻も楽しめい
さて、芝居
チェーホフはボードヴィルとして書き上げた戯曲
恐らく昨年上演された『ロマンス』を観てこられたお客さんも少なくないと思われる客席
果たしてボードヴィルなのか?
そんな空気もあったでしょうし
何より井上ひさしさんの芝居を数多く演出されている栗山民也さんが
その見識をふまえていないわけが無い
しかしなんていうのでしょうか
チェーホフが不可思議と言うか少し世間とずれていたと思います
だって1898年のモスクワ芸術座による上演(スタニスラフスキー演出)時に
既に悲劇で演じられていたのですから
あの状況を笑えるというのは
無関心であるとか、達観しているとか、絶望しているかとか、もの凄く恵まれている人とか
如何に生きたら良いか悩んでいない人間なのではないのかしら
最後に主要人物であるトレーブレフが拳銃自殺をするけれど
自殺されたんじゃなんだかなぁという気持ちになってしまうのです
そのどん底さを笑おうという逞しさがあればいいのかもしれませんが
私としてはニーナ役が美波さんだったのが意外
てっきり小島聖さんが演じるものだと思っていました
小島さんのマーシャも良かったのですが
何だか消化不良な感じで観ていてこちらが胃もたれをしてしまう
この得体の知れないイライラ感が
マーシャという存在ならば成功と言えなくもないのですが
アルカージナの麻実れいさんは流石
圧倒する女優として存在する傲慢さと美しさ
けれど彼女の存在が一番滑稽かもしれないとふと思う
恐らく女性の観客の大部分が一番身近に感じるポリーナを演じた藤田弓子さんがパンフレットに
文学座の新人女優が、まず勉強するのが『かもめ』のニーナなんです。」
と綴っている箇所にはっとなる
『ニーナ』という役は芝居を志した女優が共感する特別な役なのだと
それを経て『かもめ』でどの役を演ずることになるのかが
どういう女優として活動してきたか
それをみるのも楽しいかもしれない
「私はかもめ」という台詞が幾度と出てくるが
私が知っている数少ないロシア語のフレーズがまさにこれ『"Я чайка"(ヤー チャイカ)』
初の女性宇宙飛行士ヴァレンチナ・ヴラディミロヴナ・テレシコヴァが宇宙で発した最初の言葉
として記憶しているので
なんだか全然悲壮感がないのです
実際のところ彼女のコードネームが『かもめ』だったようですが
宇宙空間を飛ぶカモメをその言葉に重ね合わせていたので
「私はかもめ」と聞くと壮大で自由なイメージがわき起こってしまうので
そのギャップが私にとってこの芝居の可笑しさだったかもしれません