【父と暮らせば】こまつ座第八十五回公演・紀伊國屋書店提携

舞台が終わって席を離れるとある男性客が
一緒に来ていた女性対して発した
「話を知っているから最初っから泣いちゃって」
の言葉に密かに同意
ピカが落ちた日から雷が恐くなってしまった福吉美津江さん
オンボロの家ながらも掃除をしっかりして綺麗に使う様子
貧しい材料で美味しそうな料理を作る様子
気だての良さが伺えるエピソードを挟みながら
神出鬼没な美津江の恋の応援団長の「おとったん」に
甘えたり、口答えしたり、邪険にしたり、じゃれたり
の二人芝
人を好きになればなるほど
自分は人を好きになってはいけない
幸せになってはいけない
という気持ちに押しつぶされてしまう
女学校で同級生だったのアキコさんに出す手紙を落としてかがんだお陰で
直爆せずにすみ
倒壊した家の中からもなんとか這い出ることが出来たのに
広島を離れていた女学校の同級のアキコさんはたまたまその日広島に来ていて被爆
「おとったん」は潰れた家から出ることが出来ず
火に飲まれてなくなってしまった
こうして自分が生きているのが
申し訳ないと泣いて突っ伏す美津江
「おとったん」はこうした悲しい別れが
もう二度と起らないようにと
生きている意味を美津江に語る(ようにとらえました)
こまつ座にしては短い1時間20分休憩なし
笑いながら美津江の恋の行方を気にしながら
あっという間に進み
後半は涙涙
客席では嗚咽する人も
見ていると若い人の方が開けっぴろげに泣いている感じ
この戯曲をあざといと思う人もいるだろうけれど
生と死が根底を流れ喜怒哀楽が散りばめられた大変練られた戯曲だと思う
昔知り合った学校の先生が
自分たち教師が生徒の前で上演したことがあると言っていた
芝居には素人な彼女らの演技でも
生徒は泣いたというのだから
相当な戯曲だと思うわけです
とか言っても
役者も良い
再演を重ねた辻萬長さん
すまけいさんとは違う堅さも感じる「おとったん」
そして文学座の栗田桃子さん
芯がしっかりして気だてが良くて
美人ではないけれど愛嬌のある美津江さん
もんぺも似合って可愛らしい
素敵な配役
で、こんな役者を揃えている文学座って凄いなと思う