【魔笛】モーリス・ベジャールバレエ団ベジャール・フェスティバル3 プログラムB

fk_akk2004-06-22

原曲使いオペラより軽快に
モーリス・ベジャール・バレエ団「魔笛
日経新聞 2004/7/1)
 モーツァルトの人気オペラのバレエ化。オペラのバレエ化は数多くあるがこの作品はオペラ全曲をバレエで演じるという点でユニークだ。冒頭に大蛇が登場するところから結末まで、そっくり原曲にそって演じられる(ただし演奏は録音)。
 王子タミーノが宗教的・哲学的試練をへて、夜の女王の娘パミーナと結ばれるという物語である。
 もともと歌う(聴く)ために作られた曲でうまくバレエができるのかという疑問を抱く人もいるだろうが、さすが二十世紀最大の振付家モーリス・ベジャール、このオペラは元来バレエだったのではないかという錯覚に陥るほどの見事なバレエ化だ。まるで魔法のように、歌詞が、ベジャール独特のバレエ表現、つまりクラシック・バレエを基本としながらさらにそれを拡大した表現に置き換えられている。一九八一年に初演された作品で、日本での上演も二十二年ぶりだが、少しも古びていない。
 ダンサーたちはほとんど、男性は裸の上半身にタイツ、女性はレオタードあるいは水着のようなビキニ・スタイル。ザラストロも夜の女王も踊るので、当然だがごてごてした衣装はつけておらず、そのために全体的にオペラよりもずっと軽快だ。
 原曲はジングシュピール(歌芝居)という形式で、アリアとアリアの間に台詞があるのだが、このバレエには弁者がいて、彼が登場人物たちの台詞を一手に引き受けるだけでなく、状況を説明し、さらには主役たちと踊る。ベジャールの片腕ともいうべきジル・ロマンがその弁者を演じ、全体を引き締めていた。
 さらに、ジュリアン・ファブロー(ザラストロ)らベテランが脇を固めるなか、まだ入団して二年目というパミーナ役のルース・ミロが、眩いばかりの純真さを発散していた。24日、簡易保険ホール。

2年ぶりとなるモーリス・ベジャール・バレエ団日本公演。プログラムは二つ。モーツァルトのオペラを舞踊化した「魔笛」はベジャールには珍しく、オペラのもつストーリーを忠実に追ったものとなっていることから、バレエ・ファンだけでなく、オペラ・ファンにとっても興味深い作品となるのではないでしょうか。オペラ好きだけれど、バレエは観たことがない、という方に、ぜひお楽しみいただきたい演目の一つです。一方のミックスプログラムでは、R.シュトラウスの「四つの最後の歌」から創作された「これが死か」とともに、2003年12月初演の新作「海」が上演される予定です。こちらは巨匠ベジャールが到達した境地を反映したものになると思われ、バレエ・ファンなら決して見逃せません。