【人形の家】シス・カンパニー公演

宮沢りえ 堤真一 山崎一 千葉哲也
神野三鈴 松浦佐知子 明星真由美

まさにノラが人形の家に住むおままごとの人形のように演出された舞台
天真爛漫と言えば聞こえが良いが
やはり少し世間と隔絶されたところに住むお嬢様
病床に伏した旦那が天地療法が必要だからと
評判の良くない金貸しに旦那に無断でお金を借りて
家族揃って療養でイタリアへ行くなんて
卒倒もの
借金嫌いの旦那としては
限りある収入で生活しなければならないのにと
ホントに手綱を手放せない
女性の自立の芽生えを提示した作品として語られる物語だけれども
日々家計のやりくりを考える女性にとっては
実はちょっと考えられないお話かもしれない
全てを凌駕する旦那の傲慢さの演出が足りなかった気がする
この舞台で見る旦那は
優しくて臆病で真面目とても孤独
そんな旦那を置いてくのかよぉーって
少し同情してしまう
また、ノラが「真剣に話し合いましょう」と
リングのごとく対峙して話し合いを持つけれど
そのノラがこの先1人で生きて行けるのか
心配になってしまう子供らしさを強く感じる終わりだった
なにしろ周りの人たちが辛い人生を歩んできているのだから
ノラを密かに慕う死が間近に迫る病魔に冒された(親の不道徳のせいで)
ヘルメル夫妻の医者の友人
ノラの友人リンデ夫人は
慕う人との結婚を退け安定のある収入のある人と結婚するも
死に分けれ十分な資産もないままに佳人で辛酸たる生活を耐え
久しぶりに再会した友人からある種の蔑視を受け
別れた恋人はその友人夫妻から卑しいと蔑まされる存在になっていたり
ノラにお金を貸したクロクスタは
若い頃はヘルメルの友人であったのに
在職を乞わなければならない立場になっているし
お金を貸したのに感謝されず
罵倒され続ける
ノラの乳母は
子供を家に残し乳母へとなった過去を持つ
そんな中でノラのお人形さんっぷりは段違いで輝いている
本当に人形の家を一歩出たお人形さん
舞台は客席を通常の舞台側へ設置し
低いところを覗き込むような造り
ヘルメル家の居間
時にゆっくり回る
主人である弁護士のヘルメルが
翌春に銀行の頭取の就任が決まった年越しの前のクリスマス
浮かれた気分と裏腹に襲われる暗い影が対照的に描かれる
華やかなもので埋め尽くされて行く前半と
どんどんと物が無くなって行く後半
最後に床に現れたのは四隅に描かれた擦れたお花模様
ノラを象徴しているようだ